Policy / ポリシー

米連邦控訴裁、AI学習用データ作成の複製を「フェアユース」と認めず

トムソン・ロイターが起こした著作権訴訟で、AI企業が学習データ構築のために保護対象の素材を複製した行為はフェアユースに当たらないとの判断が控訴審でも維持されました。音楽業界団体が支持に回っています。

米国の連邦控訴裁判所が、AI企業による学習データ構築のための複製を「フェアユース」とは認めない下級審の判断を支持しました。訴えていたのは、法律情報データベースなどを手がける情報サービス大手のトムソン・ロイターです。音楽業界からは、米レコード業界団体のRIAA(全米レコード協会)と、楽曲の権利を扱う出版社の団体NMPA(全米音楽出版者協会)がこの訴訟を支持していました。

「フェアユース」が効かない領域が見えた

フェアユースは、批評や研究など一定の目的であれば権利者の許諾なしに著作物を使える、という米国著作権法の考え方です。生成AIをめぐる訴訟では、開発側がほぼ例外なくこの抗弁を持ち出してきました。学習は人間が本を読んで学ぶのと同じであり、出力は元の作品と競合しない、という組み立てです。

今回の判断は、その抗弁が控訴審のレベルで通らなかった事例になります。注目すべきなのは、争点が「AIが何を出力したか」ではなく「学習データを作るために何をコピーしたか」に置かれている点です。出力の類似性を立証するのは権利者にとって負担が重い作業ですが、データセット構築の段階での複製であれば、争い方が変わってきます。

音楽・映像業界が支持に回った理由

RIAAとNMPAがこの訴訟を後押ししたのは、同じ論理が音楽の学習データにも適用できるからだと考えられます(これは筆者の見立てです)。録音物と楽曲出版という、音楽の権利の両輪を押さえる団体が揃って動いた事実そのものが、業界の訴訟戦略の方向を示しています。

ただし、米国の裁判はケースごとの事実関係に強く依存します。今回の判断が生成AI全般にそのまま及ぶと断定はできません。それでも、「学習は常にフェアユース」という前提が法廷で自明ではなくなったことは、作り手の側にとって意味のある変化です。


この記事には、専門用語を使わずに書いたやさしい版もあります。

出典: Music Business Worldwide「US appeals court rejects ‘fair use’ defense over AI training – as Thomson Reuters wins copyright case backed by RIAA and NMPA」

Sources

  1. US appeals court rejects ‘fair use’ defense over AI training – as Thomson Reuters wins copyright case backed by RIAA and NMPA Music Business Worldwide — musicbusinessworldwide.com — 2026.09.30